心臓は血管を通じて、血液を循環させています。つまり、循環器内科とは、心臓と血管を診る内科です。循環器疾患の症状としては、胸や背中の痛み、動悸、息切れのほか、足のむくみ・痛み、ふらつき、失神がありますが、症状がないこともあります。このような症状がある場合は、患者さんはかかりつけ医に相談して、遠慮なく受診もしくはご紹介ください。
私たちは、時に「熱く」、時に「静か」な診療を行っています。
熱くとは、循環器疾患の特徴である重症かつ刻一刻と変化する病状に迅速に対応することができる体制を指しています。 具体的には、緊急カテーテル治療・IABP、重症個室管理により、24時間体制365日、急性心筋梗塞や重症心不全に常に対応できるような診療体制をとっています。
また、当科は常勤で不整脈専門医がいることにより、平日はアブレーション治療やペースメーカー植え込み術を常時行っております。
さらにご高齢患者さんや在宅患者さんの急変時の対応も、個々患者さん・かかりつけ医の求めに応じた診療に積極的に対応しています。
静かな診療の特徴は「患者さんにやさしく、きめ細かな診療」です。そのため当院は放射線や造影剤を使用しない心臓MRI、再発予防のための患者教育や心臓リハビリテーションに力を入れています。きめ細かな診療として、当院における充実した画像診断が挙げられます。外来では先に紹介した心臓MRIに加え、心臓CT・心筋シンチ、心エコー専門医や血管エコーのエキスパート技師による緻密で詳細な評価が可能で、これらの非侵襲的検査をできるだけ初診日に終了する体制を構築しています。
また、冠動脈の侵襲的画像診断は、冠動脈造影・血管内エコー、OCT・OFDI、血管内視鏡や心腔内エコー等すべて可能です。
これらの充実した画像診断に基づいた情報を、医師・スタッフによる循環器チームが一丸となって検討し、細やかな治療戦略を立てています。
腫瘍循環器外来について
当科では、本来の一般的な循環器外来に加えて、「腫瘍循環器外来」を設立しております。
近年、高齢化に伴う悪性新生物患者の増加に伴い、抗がん剤治療などによる心毒性発症の報告も少なくありません。また、がん患者には基礎疾患に循環疾患を有する症例も多く、併せて診療を組み立てる必要があります。
腫瘍循環器外来とは、がん治療を受ける前,治療中,治療後数年に渡って経時的に動脈硬化リスク因子を管理し、心機能評価を行うことで、がん患者の心血管疾患発生を予防もしくは軽減することを目的とした専門外来です。
●治療に関するアルゴニズム
心毒性のマネジメントで重要なことは、抗がん剤治療による心毒性が不可逆な状態になる前に、心毒性の予防、早期発見・治療介入を行うことです。つまり、経時的な心臓モニタリングが大切であり、以下のような内容で実施しています。
(がん治療前)
1) | 詳細な患者情報の収集(かかりつけ医、がん専門医との連携、家族構成などの問診:チェックリストのマニュアル化) |
2) | 心血管リスクの評価(動脈硬化リスク管理、ECG、UCG、(必要時)頸部および下肢エコー、ABIなど) |
3) | 運動耐容能の評価(運動負荷心電図、CPX、呼吸機能検査など) |
4) | 心保護薬導入の検討(ACE阻害薬、利尿剤、β遮断薬など) |
(がん治療中)
1) | 治療薬剤、投与量、投与期間などの治療内容の確認 |
2) | 心血管モニタリング(心機能評価、不整脈出現の有無など) |
3) | 心血管イベントの早期発見、急性心疾患への対応(血栓症のリスク確認、肺塞栓や心筋梗塞発症リスクの軽減) |
4) | 身体所見の観察(脱水の有無、体重変化、電解質異常などの早期発見) |
(がん治療後)
1) | がん治療前からの問題点の経時的介入 |
2) | がん治療に伴って生じた心血管疾患の経時的フォロ‐アップ |
3) | 晩発性の心血管合併症に対する早期発見(血栓症など) |
4) | 免疫力低下による感染症対策(ウィルス性疾患の予防、食事指導など) |
●検査内容/指導・教育
1) | 一般的な心機能評価(ECG,UCG,ホルター心電図、BNP測定)、必要に応じて運動負荷心電図、冠動脈CT、心臓MRI(当院でも可能な検査)など |
2) | 心血管合併症のリスク因子管理(動脈硬化リスクである血圧、血糖、脂質などの定期検査、ABI、頸動脈エコーなど |
3) | 心機能低下例/心不全発症患者における生活指導、心臓リハビリ導入 |
【重要】
腫瘍循環器外来を受診する場合は、かかりつけ医の紹介状が必要です。
(予約制) 月曜日 および 金曜日 午後1時以降 |